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顧客のニーズに耳を傾け、新規事業を開拓した創業40年企業【松幸産業】 | ResorTech Okinawa
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株式会社松幸(まつゆき)産業は、1980年に創立。食肉・食品加工機械、重点包装機械、計量・検査機器、食品衛生検査機器、包装資材など食品加工現場で必要な様々な商品を取り扱い、沖縄県内の食品製造会社をサポートしてきました。
その営業活動の中、食品製造現場が衛生管理に苦慮する様子を目の当たりにした末吉健悟(すえよしけんご)さん。どうにか仕組み化して対処することはできないか、と考え、元エンジニアの知識を生かし「まずは必要最低限の機能を持ったものを」と衛生管理アプリ『haccplog(ハサップログ)』を開発します。
HACCP(ハサップ ※)義務化の方針が発表されたのはちょうどその年、2018年でした。
現在沖縄県内および九州でも導入され、松幸産業の新たな事業となったハサップログ。その誕生と成長の軌跡から、自社の強みを生かして新規事業を立ち上げる道筋を探ります。
※HACCP(ハサップ):Hazard(危害)・Analysis(分析)・Critical(重要)・Control(管理)・Point(場所)の頭文字。食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因を事業者が把握し、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法。2021年6月に食品等事業者の対応が義務化。

日々耳にする顧客の困りごと。解決のためにアプリ開発を思い立つ

末吉さんは県外IT企業に勤務していたエンジニアで、2011年、祖父の体調悪化を機に沖縄へ戻ってきました。その際に「手伝ってほしい」と声をかけられ、父親の経営する松幸産業へ入社。営業、機器のメンテナンス、事務など様々な部署を経て、営業部署に再度配属され、多くの顧客と接する日々を過ごします。
そんな中、末吉さんは品質管理に苦慮する声を良く耳にするようになったのだそうです。

末吉さん
「現場で働くスタッフにとっては、品質管理のためとはいえ書類やExcelによる細かな記録作業は大きな負担です。品質管理側は会社の経営を左右しかねない食中毒や異物混入発生を避けるため、記録に関して厳しくならざるを得ない。『安全で高品質な、おいしいものを作りたい』という同じ目的を持って働いているはずの現場側と管理者側に対立構造が生まれてしまっているのを見て、記録作業を仕組み化し、負担を軽くすることでそれをどうにか解決できないか、と考えました」

ハサップログの開発統括・セールスを担う末吉さん
ハサップログの開発統括・セールスを担う末吉さん

ハサップは2021年にすべての食品等事業者において義務化されましたが、それ以前は認証を得ることで製品の安全性や品質の高さをPRするものでした。対応するシステムは、認証のために必要な書類の自動作成まで行える大規模事業者向けの高額・多機能なものが多く、中小規模の事業者の「記録する」というニーズにフィットするサービスはほとんどない状況。高額なシステムを導入することもできず、多くの中小規模の事業者はやむなく紙での管理を続けていたのです。
末吉さんは、エンジニアの経験を生かし、中小規模の事業者にとって使い勝手のいいハサップ対応アプリを開発しようと思い立ちます。

ハサップ義務化発表の翌年に完成。新聞記事から県内4社が顧客に

会社としてではなく、個人の取り組みとして始めたアプリ開発。末吉さんはプロダクトやサービスを必要最小限の機能で開発し、顧客の反応を検証しつつ改善を重ね、ブラッシュアップしていく「MVP(Minimum Viable Product)」という手法を採用します。作業は業務時間外、平日に1時間、土曜日の半日程度を費やし、約1年後の2019年、必要最小限と考えられる機能を備えたhaccplog(ハサップログ)を完成させました。
折しも、2018年は2021年のハサップ義務化の方針が示されたタイミング。完成後、YouTubeに取り扱い方法などをアップしたところ、顧客への案内や広告などは一切行わなかったにもかかわらず、検索流入だけで約100社の登録があったそうです。
2021年には沖縄県内の新聞社から取材依頼が舞い込み、新聞に掲載された記事を見た県内食品製造業者4社から問い合わせが入ります。

約1年をかけて開発された「haccplog(ハサップログ)」
約1年をかけて開発された「haccplog(ハサップログ)」

末吉さん
飲食店での使用を想定して作成したアプリでしたが、どの事業者さんも『少しアレンジすればうちで使える。使ってみたい』と言ってくださったんです。開発の途中で製造の現場でも使えるだろうと感じていたこともあり、本格的に開発に取り組もうと考えました」

ハサップログの本格開発に向け、越えなければならないハードルは二つありました。開発のための体制整備・資金調達と、会社の新規事業として取り組む承諾を得ることです。
末吉さんはまず沖縄県に補助金等の支援について問い合わせを行い、紹介を受けたISCO(沖縄ITイノベーション戦略センター)でICTビジネス高度化支援事業(沖縄県商工労働部ITイノベーション推進課事業)の存在を知ります。

末吉さん
「IT企業向けの補助金ですが、企業の取り扱いサービスの中に項目を追加すれば利用できるということで、会長と社長を説得し、申請することにしました」

原動力は「世の中の役に立つ新しい何かを作りたい」思いと創業者の言葉

末吉さんの兄、啓真さんに社長の座を譲り、会長職に就いた前社長は、「顧客のベストパートナーになること」を理念としていました。そのためには商売道具は何でもかまわない、という考え方の持ち主で、新規事業開拓にも意欲的でしたが、ハサップログ開発に関しては、当初、あまり前向きではなかったそうです。

末吉さん
「兄は全面的に賛成してくれましたが、父は『そんなものが売れるのか』と。新規事業の重要性も感じ、新しい技術への興味も高いんですが、ITバブルが弾けたことで、事業として展開することには少し消極的なところがあったんです。
結局、補助金申請を進めて資金調達の道筋を立て、半ば事後承諾のような形で了承してもらいました」

今思えば、親子だからできる、一族経営ならではの方法だった、と笑う末吉さん。そこまでして新規事業化を進めた原動力は、末吉さんの思いはもちろん、他ならぬ会長の言葉にもありました。

末吉さん
「松幸産業への転職を決めたのは、『ITとはかけ離れた業種だからこそ、ITを使ってできることがあるはずだ』と考えたからでもあったんです。入社当初から、これまでの自分の経験や技術、知識を使って、世の中の役に立つ新しい何かを作れないかという意識で取引先を回っていました。
ある会議の場で、当時社長だった父が『新規事業につながるものを探しながら営業してほしい』と発言したことも良く覚えています。入社して5年経った頃でした。それ以来、父の言葉は常に頭の片隅にありました

県内食品製造業者との二人三脚でより使いやすくブラッシュアップ

ハサップログは、ローコードツール(少ないプログラムコードで開発可能で、他のシステムとの連携や機能拡張が可能な開発ツール)を使用して作成されています。中小規模の事業者が利用しやすい価格帯での提供を行うための選択でした。
さらに、「記録する」ことに機能を絞り、ベースはテンプレート化。ユーザー企業とのコミュニケーションは密に取って使い勝手の改善を進める一方、機能追加のリクエストはいったんふるいにかけて対応しました。汎用的な意見は基本機能として反映させ、その企業のみが必要とする機能については、開発費を支払って追加するオプションとして取り扱うスタンスです。

末吉さん
ハサップログはお客さまと一緒に作ったようなものです。各企業から様々な要望がありましたが、すぐに対応するのではなく、ほかの企業の方に確認して必要性を確かめていました。と言っても、ほとんどの場合は『ぜひ追加してほしい』という反応で、やはり必要なものは共通しているんだな、と感じましたね」

複数の製造ラインを表示するなど、県内顧客の声からの機能追加も行った
複数の製造ラインを表示するなど、県内顧客の声からの機能追加も行った

画面に表示される製造ラインを1製品のみではなく複数にする。
製造工程が1日では終了しない「半製品」の製造スケジュールを自動で翌営業日に繰り越す機能を追加。
デジタルツールにあまり慣れていない方でも見やすく、わかりやすい操作性の実現。
ハサップログは、末吉さんと県内食品製造業者との二人三脚で、少量多品種の製造を行い、年配スタッフも多い県内の食品製造業者にフィットしたものへとブラッシュアップされていきました。
現在は県外にも2社のユーザーを抱え、2社が導入を検討中だということです。

自走化へ向け県外展開。業務と顧客に深く目を向け、見えてくるものを大切に

末吉さんを始め5名の開発チームは、ICTビジネス高度化支援事業の3段階のステップを順調に進み、現在、自走化へ向かう最終段階「事業化ステージ」を利用中。プロモーションや見込み客との商談へ力を注ぎ、支援事業終了後は、松幸産業の新規事業として3年での黒字化を目指しています。

エンジニアから松幸産業への転職。社長の言葉、衛生管理記録に苦慮する顧客の声。アプリ完成直前に発表されたハサップ義務化。
ハサップログの開発には必要なことが必要な時に起こり、何かに後押しされて進んだように感じられます。

末吉さん
「ハサップ義務化の発表を聞いた時、これまでの経験が一気につながって、『このためだったのか』と感じるほどでした。点と点がつながって線になる、とはこういうことか、と実感しましたね。その後も新聞社の取材から顧客獲得につながったり、補助事業からとても優秀なチームメンバーとの出会いが生まれたり、色々な幸運に恵まれたと思っています」

経験や知識を生かして「何かできることはないか」という視点で今の業務を見直してみること、毎日接する顧客の声に耳を傾け、その課題を解決できる手段を考えること
末吉さんのそうした姿勢は、これまでにないスピードで大きく様変わりしていく世界の中で、企業活動を支える軸となれる新規事業の芽をどのように見つければいいのか、という問いへの答えにもなっているのではないでしょうか。

末吉さん
目の前の業務、お客さまに一段深く目を向けると、そこから色々な課題や可能性が見えてくると思います。そこで見えた部分と、自分にとってのモチベーション、『やりたい』という気持ちや適性の重なる部分に集中して取り組むことは、未来のあり方を自分の手で変えていくことにつながるのではないでしょうか。
同じビジネスモデルではいずれ同じ壁に直面することになります。だから一度仕組みを作ってしまえば成長に合わせて人や物を投下する必要のないビジネスモデルを選びました。今のままのビジネスモデルでは解決できない課題から解放される未来が実現できるかもしれない、と考えればワクワクしませんか

食品製造に従事する人が、義務感やリスクを恐れる気持ちからではなく、本来持っている「より品質の良いもの、安全でおいしいものを作ろう」というモチベーションを上げられる、形骸化してしまいがちな記録作業を意味のあるものにできるアプリにしていきたい。

そんな思いも載せられたハサップログは、沖縄から全国へと羽ばたこうとしています。

会社概要
会社名 株式会社松幸産業
事業内容 包装機械・資材販売
創立 1980年
代表者 代表取締役社長 末吉啓真
本社 沖縄県島尻郡南風原町津嘉山1678-3
TEL 代表 098-889-8946/ハサップ事業部 098-995-8778
従業員数 29名
平均年齢 40歳

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